麦ごはんは大麦の比率が高いほど低GI
含まれるβ-グルカン量からGIの概算が可能に

【背景】
大麦を粒で摂取した場合のGI(グライセミック・インデックス)は、22(カナダ産搗精大麦)から66(オーストラリア産押麦)まで品種によって異なる(グルコース溶液=100換算)※1。日本で大麦は麦ごはんとして白米とともに摂取する場合が多いが、GIへの影響が大きいと考えられる麦ごはん中のβ-グルカン量とGIの関係は明らかではない。本研究では、β-グルカンの含有量が一般的なうるち性大麦品種の1.5倍程度のもち性大麦品種「キラリモチ」を用いて、大麦の配合比率が異なる麦ごはんのGIを求めた。

【方法】
対象は健康な成人男女10人。試験食品は糖質を50gに調整した白米ごはん、キラリモチの配合比率が30%、50%、100%の麦ごはんの4種類(表)。摂取前と食後(15分、30分、45分、60分、90分、120分)の血糖値を自己血糖測定器で測定した。それぞれの試験間隔は7日間以上空けた。試験食品は外観や色で識別可能なためオープン試験とした。



【結果】
食後の血糖値は大麦の配合比率が高いほど抑制された。累積の血糖上昇曲線下面積(IAUC)も、白米ごはんの摂取時に比し大麦の配合比率が高いほど低値で、90分間と120分間のIAUCは30%、50%の麦ごはん摂取時と100%の麦ごはん摂取時の間にも有意差があった。

白米ごはんのGIを100とした場合の麦ごはんのGIは、30%、50%、100%の麦ごはんそれぞれ79.7、67.5、48.3で、大麦の配合比率が高くなるほど有意に低値だった。糖質50gあたりのβ-グルカン量が多いほどGIが低下することも認められた。糖質50gあたりのβ-グルカン量とGIの関係を回帰分散分析した結果、β-グルカンの量が増えるに従いGIが低下した(グラフ)。



【考察と結論】
麦ごはんに含まれるβ-グルカン量が多いほど血糖値の上昇が抑えられ、GIが低くなることが示された。これは消化管内で強い粘性を持つβ-グルカンによる糖の消化吸収の遅延によるものと考えられる。

大麦のβ-グルカンはでんぷん粒を包むように存在するため、粒の状態で摂取する場合と粉砕してパンやパスタに加工したものを摂取する場合では消化吸収の速度が異なる可能性がある。著者らの先行試験※2(大麦TOPICS 大麦パンは粉の粒度にかかわらず高血糖を抑制、小麦パンより低GIにて紹介)では低粒度の大麦粉を30%配合したパン(β-グルカン量2.1g)のGIは71.8(グルコース溶液=100換算)だった。本試験における30%大麦配合の麦ごはん(β-グルカン量0.8g)のGIはグルコース溶液=100換算では63.8となる。よってβ-グルカン量が同じあっても、大麦を粒の状態で摂取する場合のほうが大麦粉の加工食品を摂取する場合に比べてGIは低くなると考えられる。

麦ごはんのGIは、含まれるβ-グルカン量が増えるに従い低下するという直線的な関係がみられたことから、麦ごはんに含まれるβ-グルカン量からGIが概算できることが示唆された。


※1 Am J Clin Nutr 76, 1, 5-56, 2002
※2 ルミナコイド研究 21, 1, 19-23, 2017


【研究機関】
大妻女子大学、農研機構西日本農業研究センター、城西大学、農研機構次世代作物開発研究センター

配合比率の異なるモチ性大麦混合米飯の摂取が食後血糖値に及ぼす影響
日本栄養・食糧学会誌 71, 6, 283-8, 2018