食物繊維摂取で糖尿病患者の余命延長
1日19g→35gで死亡リスク35%減

【背景】
食物繊維の多い食事は早期死亡率を下げ、多様な非伝染性疾患の発症とそのリスク因子を減らす。そこで、糖尿病予備群と糖尿病(1型、2型)の成人を対象に食物繊維摂取量と死亡率や心代謝性疾患のリスク因子との関連を調べた報告についてシステマティック・レビューとメタ解析を実施した。

【方法】
OVID Medline、Embase、PubMed、およびCochrane Central Register of Controlled Trials を2019年1月18日まで検索。食物繊維の摂取量と死亡率に関する前向きコホート研究と、全粒穀物や食物繊維の摂取量の増加が血糖コントロールや心血管疾患のリスク因子に及ぼす影響を検討した6週間以上にわたる比較対照試験(並行あるいはクロスオーバー)を抽出した。

【結果】
最終的に2つの前向きコホート研究と42の比較対照試験を解析の対象とした。前向きコホート研究は計22カ国、8300人の糖尿病患者を8.8年(中央値)追跡、比較対照試験は計1789人のデータを含む。

前向きコホート研究から、食物繊維摂取量の最高位群は最低位群に比し全死亡リスクが45%も低く、心血管疾患関連の死亡リスクも39%低いと推定された。食物繊維を1日に35g摂取すると19g摂取する場合に比し全死亡リスクは35%(95%信頼区間は10%~48%)低く、絶対数では追跡期間中の死亡者数が1000人あたり14人少なかった。

比較対照試験では、食物繊維の摂取量を増やすとHbA1cや空腹時血糖値、総コレステロール値、LDL-コレステロール値、中性脂肪値、体重、胴囲、CRPが有意に改善することがわかった。

【考察と結論】
多くの比較的裕福な国では、ほとんどの成人が1日あたり約20 gの食物繊維を摂取している。※1あと15 g増やし、1日あたり35 gまで摂取量を増やすのは早期死亡のリスクを10%から48%減らすための合理的な目標になり得ると考えられる。

比較対照試験の解析では、食物繊維の摂取量を増やすと糖尿病関連の生化学的な各種指標が一貫して改善した。これは前向きコホート研究における死亡リスク低減という結果を支持している。

食事療法のみ、経口薬やインスリンの投与、あるいはそれらの組み合わせといった治療法や、糖尿病の型(1型、2型)に関わらず、また糖尿病予備群にも本研究結果は適用できると示唆される。

食物繊維摂取量を増やす実用的な方法の1つは、精製穀物を全粒穀物に置き換えて摂取することである。

【研究機関】
オタゴ大学(ニュージーランド)

【大麦ラボ代表:青江誠一郎のコメント】

アメリカ、カナダの食事摂取基準では、食物繊維の摂取目安量を1日24g日以上としている。これは多くの疫学研究およびそのメタ解析により決定したものである。日本人の食事摂取基準(2020年版)においても1日24g以上を目標量とすべきとしているが、現実とのかい離が大きいことから低い目標量(18~64歳、男性21g、女性18g)になっている。さて、本論文にある「1日あたり35gまで摂取量を増やすのは早期死亡のリスクを減らすための合理的な目標」は、1日あたり食物繊維を約20g摂取している集団にはあてはまるかもしれない。しかし日本人においては1日24g以上を推奨したい。1日あたり約14gの食物繊維を摂取している日本人では、あと10g増やすべきと考える。これを達成するには、3食の主食を食物繊維の多い穀物(大麦、全粒小麦、雑穀など)に置き換えることが有効であると思われる。

※1  Nutr Res Rev 30, 2, 149-90, 2017

Dietary fibre and whole grains in diabetes management: Systematic review and meta-analyses
PLoS Med 17, 3, e1003053, 2020

2020年6月25日掲載