大麦の1品種「バーリーマックス」が腸内発酵を促し、
消化管機能を改善

【背景】
大麦の1品種である「BARLEYmax(バーリーマックス)」は、オーストラリア連邦科学産業研究機構が開発した非遺伝子組み換え大麦。一般的な大麦の品種に比べてβ-グルカン、フルクタン、レジスタントスターチといった発酵性のある食物繊維類を豊富に含む。これらは腸内で発酵に要する時間が異なるため、腸の入り口から奥までまんべんなく届けられることが期待される。本試験では、上記食物繊維類の発酵特性の違いに着目し、バーリーマックス摂取による主要な腸内細菌数の変化、腸内発酵、消化管機能に及ぼす影響を、通常品種の大麦と比較した。

【方法】
バーリーマックスと通常品種の「ハインドマーシュ」に含まれる食物繊維類の量は表の通り。バーリーマックスにはハインドマーシュに比べて総食物繊維が1.6倍、フルクタンが9倍、レジスタントスターチが4倍多く含まれる。

バーリーマックスとハインドマージュに含まれる食物繊維の量(g/100g)
4週齢のオスのノールマウス(C57BL/6J)を1週間予備飼育し、1群10匹のコントロール群(CO群)、ハインドマーシュ群(HM群)、バーリーマックス群(BM群)の3群に分け、試験飼料を15週間摂取させた。試験飼料は総食物繊維量が5%となるように、CO群とHM群ではセルロースで調整、脂質エネルギー比は25%とした。飼育期間最終週に新鮮糞を採取し、腸内細菌数はリアルタイムPCR法で測定した。解剖時に摘出した盲腸内容物の有機酸はガスクロマトグラフ質量分析を行った。回腸のL細胞マーカーのmRNA発現量はリアルタイムPCR法で、血清sIgA濃度はELISA法で測定した。

【結果】
終体重、体重増加量、飼料摂取量に有意差はなかった。糞便中の腸内細菌数はBacteroides属、Lactbacillus属、Clostridium coccoides groupAtopobium clusterClostridium leptum subgroupで、CO群に比べてHM群とBM群の両群で有意に高かった。Prevotella属ではCO群とHM群に比べてBM群で有意に高かった。盲腸内容物グラムあたりの総短鎖脂肪酸量もプロピン酸の量も、CO群に比べてHM群とBM群の両群で有意に高かった。回腸L細胞マーカーの1部(転写因子、受容体など)で、HM群に比べてBM群で有意に高かった。消化管免疫の指標となる血清sIgA濃度も、HM群に比べてBM群で有意に高かった。

【考察と結論】
Prevotella属以外の腸内細菌数の増加や短鎖脂肪酸量の増加はHM群、BM群の両群で見られたことから、共通して多く含まれるβ-グルカンの影響と考えられる。BM群では炭水化物の分解酵素が多いPrevotella属の増加や、各種L細胞マーカーの発現増強がみられたことから、バーリーマックスに含まれるフルクタンやレジスタントスターチの影響と考えられる。

【大妻女子大学青江誠一郎教授のコメント】
有用な腸内細菌数の増加や短鎖脂肪酸量の増加といった、メタボリックシンドロームの改善に役立つ働きについては、通常の大麦品種にも豊富に含まれるβ-グルカンの寄与が大きい。消化管機能全体の改善は、フルクタンやレジスタントスターチといった、β-グルカンとは発酵に要する時間の異なる食物繊維類が加わることで増強されたと考えられる。

【研究機関】
大妻女子大学、帝人

大麦品種BARLEYmaxの摂取がマウスの腸内代謝に及ぼす影響
2018年5月13日 第72回日本栄養・食糧学会大会, 口頭発表