大麦は食後高血糖、とろろはインスリンの上昇を抑制
「麦とろごはん」の血糖コントロール作用を確認

【背景】
白米に大麦を混ぜて炊飯した「麦ごはん」に山芋をすりおろしたとろろをかけた「麦とろごはん」は、大麦の代表的な食べ方として広く浸透している。大麦もとろろも食後の血糖上昇をゆるやかにする低GI(グライセミック・インデックス)食品であるというデータもあるが、同時摂取したあとの食後の血糖動態に関する報告は少ない。本試験では、白米ごはん、麦ごはん、とろろをかけた白米ごはん、麦とろごはんについて、食後の血糖値やインスリン分泌への影響を比較した。

【方法】
健康な成人男女12人(平均22.7歳)を対象とする非盲検ランダム化クロスオーバー試験。利用可能な炭水化物量を50gに調整した白米ごはん、麦ごはん(食物繊維1.6g、うちβ-グルカン1.0g)、とろろをかけた白米ごはん(食物繊維0.6g)、麦とろごはん(食物繊維1.9g、うちβ-グルカン0.9g)それぞれの摂取直前、食後15分、30分、45分、60分、90分、120分の血糖値を自己血糖測定器で測定、摂取直前、食後15分、30分、60分、120分のインスリン値をELISA法で測定した。

【結果】
白米ごはん摂取後に比し、食後の血糖値の変化量は麦ごはん摂取後(15分、30分、60分、120分)と麦とろごはん摂取後(15分、90分)で有意に低かった。インスリン値の変化量は、麦とろごはん摂取後(30分、120分)で有意に低かった。解析の結果、血糖値の変化量、インスリン値の変化量のいずれも、麦ごはんととろろを同時摂取することによる相乗効果は認められなかった。

【考察と結論】
先行研究では、食後高血糖の抑制作用が確認されたβ-グルカン量は1.06gから3.5gだったが、※1-3 本試験では、1.0gのβ-グルカンを含む麦ごはん、同0.9gを含む麦とろごはんで有意な血糖上昇抑制作用が確認できた。麦ごはんにおける大麦の配合比率は24%で、健常人が継続的に摂取可能な量である。とろろ自体は低GI食品であるものの、とろろをかけた白米ごはんでは血糖上昇抑制作用が確認できなかった。したがって、血糖上昇抑制作用は主に大麦によるものと考えられる。

一方、インスリン値の上昇抑制は麦とろごはんのみにみられたことから、とろろの寄与するところが大きいと考えられる。とろろをかけたことによる咀嚼回数の減少が影響し、消化吸収に時間を要したためという可能性も考えられるが、メカニズムの検証は今後の課題である。

【研究機関】
はくばく、山梨大学、静岡県立大学、山梨学院大学

※1 薬理と治療 42, 9, 687-93, 2014
※2 J Am Coll Nutr 25, 4, 313-20, 2006
※3 栄養学雑誌 73, 6, 253-8, 2015

大麦とろろ飯の食後糖代謝ならびにインスリンに及ぼす影響
2018年5月12日 第72回日本栄養・食糧学会大会, 口頭発表