大麦TOPICS

大麦シリアルは体重、血糖コントロール、満腹感を改善しメタボリックシンドローム対策に有効

【背景】
現代の食生活は、多忙なライフスタイルを背景に伝統的な調理から簡便な食品へと移行し、外食や中食への依存度が高まっている。この変化は食物繊維の摂取量低下を招き、世界的に肥満や過体重の増加が問題となっている※1。食物繊維、特にβ-グルカンを豊富に含む大麦の摂取は、食後の血糖値上昇抑制や満腹感を高めるなど、代謝改善効果が期待される。しかしながら、手軽なシリアル製品に大麦が用いられることはあまり多くない。

そこで本研究では、過体重の韓国成人を対象に、大麦ベースのシリアルが、一般的なトウモロコシベースのシリアルと比較して、血糖コントロール、満腹感、およびメタボリック・ヘルスを改善するかどうかを評価することを目的とした。

【方法】
本研究は2段階で実施された。

<フェーズ1(短期試験)> BMI 23~29.9、または体脂肪率が男性25%以上、女性30%以上の成人15名が対象。添加物は一切含まず、最小限に加工された全粒の大麦、小麦、トウモロコシが含まれるシリアルをそれぞれ摂取させ、食後120分間の血糖値と主観的な満腹感を比較評価した。大麦、小麦、トウモロコシのシリアル一食当たりの食物繊維量は、それぞれ7.93g、7.18g、3.92gであった。このうち、食後血糖値への反応が最も良好であった大麦と最も不良であったトウモロコシをフェーズ2の研究用シリアルとして選定した。

<フェーズ2(ランダム化比較試験)> フェーズ1の結果に基づき、BMIが23~29.9の過体重の成人30名を、大麦シリアル群(15名)とトウモロコシシリアル群(15名)に無作為に割り付けた。参加者は6週間、毎朝、各シリアル約60g(利用可能炭水化物約50g)を牛乳190mLとともに摂取した。大麦、トウモロコシのシリアル一食当たりの食物繊維量は、それぞれ7.83g、4.73gであった。

試験開始時と6週間後に、体重、体脂肪率、腹囲などの身体計測、および空腹時血糖、インスリン抵抗性指標(HOMA-IR)、脂質プロファイル、グリコアルブミン、GLP-1などの血液検査を実施し、両群の変化を比較した。

【結果】
フェーズ1では、大麦シリアルがトウモロコシシリアルに比べて食後30分後の血糖値のピークを有意に低く抑え、血糖値の変動が最も緩やかであることが確認された。この結果に基づき、フェーズ2の介入試験には大麦とトウモロコシが選ばれた。

フェーズ2の6週間の介入後、大麦シリアル群はトウモロコシシリアル群と比較して、体重(−1.18kg)とBMI(−0.17)が有意に低かった。また、大麦シリアル群では介入前と比べて体脂肪率(−1.03%)、腹囲(−3.64cm)、LDLコレステロール(−10.57 mg/dL)の有意な減少が認められた。短期的な血糖コントロールの指標であるグリコアルブミンは、大麦シリアル群で介入前と比較して有意に低下し(−0.78%)、トウモロコシシリアル群よりも大麦シリアル群の方が有意に改善した(−1.07%)。 インスリン抵抗性指標(HOMA-IR)は大麦シリアル群で2.32(介入前)から1.47(介入後)へと有意に改善したが、トウモロコシシリアル群では改善がみられなかった。さらに、食後30分時点のGLP-1の分泌が、大麦シリアル群で有意に増加した。満腹感に関する評価でも、大麦シリアル群はトウモロコシシリアル群に比べて「満腹感」と「満足感」が有意に高い結果となった。 一方、トウモロコシシリアル群では介入前と比べて体重と体脂肪率が有意に増加し、善玉コレステロールであるHDLコレステロールが有意に減少した。

【考察と結論】
大麦シリアルの6週間の継続摂取は、過体重の成人に対し、トウモロコシシリアルと比較して代謝および満腹感の顕著な改善効果を示した。 体脂肪率やウエスト周囲径の改善は、食物繊維が体重や脂質プロファイルに有益な効果をもたらすという先行研究の結果※2と一致した。これらの効果は、大麦に豊富に含まれるβ-グルカンなどの食物繊維が、食後のGLP-1分泌を促進し、満腹感を高めるとともにインスリン感受性を向上させたこと※3によると考えられる。

本研究の結果は、大麦ベースのシリアルが、一般的なトウモロコシベースのシリアルよりも優れたメタボリック・ヘルスの改善効果と満腹感をもたらすことを示した。朝食を大麦シリアルに置き換えるという簡単な食事介入が、肥満やメタボリックシンドロームの管理において実用的かつ効果的な戦略となり得る。

【研究機関】
慶熙大学校、ロッテR&Dセンター、National Korean Medical Clinic(いずれも韓国)

【大麦ラボ代表:青江誠一郎のコメント】

大麦シリアルを用いた小規模ヒト介入試験に関する論文である。測定パラメーターが古典的で新規性はない。また、大麦中のβ-グルカン量を記載していないのは問題である。メタボリックシンドロームの改善に関するエビデンスの蓄積が望まれる。

※1 WHO Fact Sheet, 2024
※2 Crit Rev Food Sci Nutr 63, 8752–8767, 2023
※3 Nat Rev Endocrinol 11, 577–591, 2015

Barley-Based Cereals Enhance Metabolic Health and Satiety in Overweight Korean Adults: A Randomized Trial
Nutrients 17, 17, 2801, 2025

2025年11月6日掲載