穀物繊維は炎症マーカーを下げ、心血管疾患のリスク低下に寄与 米国の前向き大規模研究で確認

【背景】
食物繊維、中でも穀物の食物繊維(穀物繊維)の摂取量が多いほど心血管疾患のリスクが低くなるのは、全身の軽微な慢性炎症(以下、炎症)が抑えられるためというのが一般的な仮説である。また複数の先行研究において、炎症マーカーと心血管疾患の発症との間には正の相関が示されている。しかし、食物繊維摂取量と心血管疾患リスクの逆相関に炎症がどの程度関与しているかは明らかでない。また食物繊維の摂取源の違いが炎症マーカーや心血管疾患の発症リスクに与える影響も分かっていない。

本研究は食物繊維摂取量と各種炎症マーカーのレベル、心血管疾患の発症リスクとの関連を前向き調査により明らかにすることを目的とした。

【方法】
対象はCardiovascular Health Study(CHS)に1989年から1990年に登録された米国在住の65歳以上の4125人(男性1652人、女性2473人、平均年齢72.6歳、95%が白人)。登録時に食事摂取頻度調査票を用いて総摂取エネルギー量、総食物繊維摂取量および摂取源(穀物、野菜、果物)別の食物繊維摂取量を推定し、空腹時の血液を採取して各種炎症マーカーを測定した。半年に1回のフォローアップ(対面訪問と電話の交互)により心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化による心血管死)に関する情報を収取した。フォローアップは2015年6月までに完了した。

多変量解析により食物繊維摂取量と8つの炎症マーカー(CRP、sCD14、sTNHR1、IL-6、IL-18、IL-1RA、sIL-2Ra、sCD163)との関連を評価した。食物繊維摂取量と心血管疾患リスクの逆相関への炎症の関与を評価するために、6つの炎症マーカー(上記からsIL-2Ra、sCD163は数が少ないため除外)に基づき主成分分析を行い、第一主成分(PC1)を評価した。

【結果】
摂取エネルギー量で調整後の総食物繊維摂取量は平均16.3g/日、摂取源別では穀物が4.2g/日、野菜が6.9g/日、果物が5.2g/日だった。

多変量解析の結果、総食物繊維摂取量が多量(5g/日ごと、以下同)だとCRP、IL-1RAが有意に低く、sCD163が有意に高かった。食物繊維の摂取源別では、穀物からの摂取量が多量だとCRP、IL-6、IL-1RAが有意に低かった。野菜からの摂取は、いずれの炎症マーカーとも関連しなかった。果物からの摂取量が多量だとsCD163が有意に高かった。

追跡期間(中央値11.9年)に1941の心血管疾患が確認された。Cox回帰分析の結果、心血管疾患のハザード比は総食物繊維摂取量が多量だと0.95、穀物からの食物繊維摂取量が多量だと0.86だった。野菜や果物からの食物繊維摂取量との関連はなかった。

穀物からの食物繊維摂取量が多いと心血管疾患の発症リスクが低くなることに、特定の炎症マーカーが関わるかどうか媒介分析を行った。6つの炎症マーカーそれぞれが媒介する割合はIL-18の1.5%からCRPの14.2%の範囲に収まった。PC1では、穀物の食物繊維による心血管疾患の発症リスク低減作用を炎症が媒介する割合は16.1%、媒介効果を弱める可能性のあるBMIによる調整を除くと18.7%となった。

【考察と結論】
食物繊維の摂取量が多いほど各種炎症マーカーのレベルは低くなり、この関連には穀物からの食物繊維が主に寄与していた。穀物の食物繊維は全身の慢性炎症を抑えるのに効果的と示唆される。

ただし穀物の食物繊維摂取量と心血管疾患の発症リスクの逆相関に炎症が媒介する割合は20%弱だった。穀物の食物繊維は主に炎症以外のメカニズムで心血管疾患のリスクの低下に寄与すると考えられる。たとえば穀物の食物繊維による直接的な作用や、ほかのメディエーター(糖代謝、脂質プロファイル、腸内細菌叢、短鎖脂肪酸)の影響などがある。

【研究機関】
コロンビア大学、ワシントン大学、ハーバード大学、バーモント大学、カリフォルニア大学、ニューヨーク医学アカデミー、ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターなど(すべて米国)

【大麦ラボ代表:青江誠一郎のコメント】

これまで生活習慣病の発症率と穀物由来の食物繊維摂取量が負の相関を示すことが注目されてきたが、今回各種炎症マーカーと穀物由来の食物繊維摂取量に負の相関が示された。生活習慣病の発症率と同様に、野菜や果物よりも穀物からの食物繊維摂取が炎症抑制に有効であることが示された重要な論文である。しかし、なぜ野菜ではなく穀物であるのかは明らかでないと著者らは記載しており、穀物中の食物繊維によるものなのか、全粒穀物やフスマ部分に含まれる抗酸化成分(フェルラ酸、トコトリエノールなど)によるものかについては不明である。穀物の種類の記載もなく、大麦やオーツ麦の寄与が気になるところである。また、生活習慣病の改善に伴った慢性炎症状態の改善を検出している可能性もある。なお、総食物繊維摂取量が増えると腎臓の炎症マーカーであるsCD163が有意に増えたが、これは果物による影響であり、穀物ではsCD163の有意な増加は認められなかったことから食物繊維以外の成分の影響と考えるのが妥当であろう。

Intake and Sources of Dietary Fiber, Inflammation, and Cardiovascular Disease in Older US Adults
JAMA Netw Open 5, 3, e225012, 2022

2022年6月1日掲載