大麦パンのセカンドミール効果を確認
食後60分以降で有意差

【背景】
大麦には、食後の血糖上昇を抑える作用が次の食事のあとにもみられる「セカンドミール効果」があり、日本では麦ごはんを用いた試験で効果が確認されている。※1海外では、大麦の食物繊維を添加した小麦パンや大麦粥の摂取後よりも、大麦の粒の摂取後に有意に高いセカンドミール効果が得られたという報告もあり、※2大麦の摂取形態によって効果に差があることが示唆されている。

われわれ日本人は朝食でパンを食べることが多い。そこで朝食のパンを大麦パンにしたとき、大麦が持つセカンドミール効果が得らえるかどうか確認する試験を実施した。なお、大麦パンでもセカンドミール効果が得られるか、日本人を対象に検討したこのような試験はこれまでなかった。

【方法】
健康な20代男女24人を対象とするランダム化二重盲検クロスオーバー試験で、ウオッシュアウト期間は4日以上。朝食(ファーストミール)で糖質量を50gにそろえた大麦パン(336kcal、β-グルカン2.5g)あるいは小麦パン(282kcal、β-グルカン0.2g)を摂取、それぞれの4時間後に同じ昼食(セカンドミール、おにぎり3個、552kcal、炭水化物121.5g)を摂取し、各食前と食後(15分、30分、45分、60分、90分、120分)の血糖値を自己血糖測定器で測定した。試験食はパンの膨らみ方の調整や、焙煎粉の添加による外観の調整で盲検化し、食べ方が均一になるようにパンの耳を切り、ひと口大で提供した。

【結果】
ファーストミール後の血糖値は、食後30分に小麦パン摂取後に比し大麦パン摂取後が有意に低値だった。血糖上昇曲線下面積は大麦パン摂取後に低値となる傾向がみられた。セカンドミール後の血糖値は、食後60分と90分に小麦パン摂取後に比し大麦パン摂取後が有意に低値だった。血糖上昇曲線下面積も大麦パン摂取後に有意に低値となった。

対象者のうち、空腹時血糖値が110mg/dLを超える糖尿病の糖尿病型あるいは境界型の診断基準に該当する被験者計6人を除外して検討したところ、ファーストミール後の血糖値や血糖上昇曲線下面積に有意差はなかった。全体の解析において食後30分で有意差が出たのは、血糖値のピークが高い境界型や糖尿病型の対象者の影響と考えられる。

一方、セカンドミール後の血糖値は、食後90分に小麦パン摂取後に比し大麦パン摂取後が有意に低値で、血糖上昇曲線下面積も大麦パン摂取後に有意に低値となった。血糖値が正常型の被験者でもセカンドミール効果が得られることが確認された。

【考察と結論】
日本で行われた先行研究と比較すると、試験食が麦ごはんの場合や※1β-グルカン含有飲料の場合※3、そして大麦パンを用いた本研究ではファーストミール後の血糖変動に一貫性がない。麦ごはんの場合は、食後30分、45分、60分で有意差があったがβ-グルカン含有飲料ではいずれも有意差がなく、本研究では食後30分でのみ有意差があった。β-グルカンの粘性などによる物理的な作用が血糖上昇に影響を及ぼしていると考えられ、飲料やパンの形態では、この物理的な作用が得られにくい可能性がある。

一方、セカンドミール効果については、2つの先行研究でも本研究でも食後60分以降で血糖上昇の抑制作用が認められた。これは、ファーストミールに含まれるβ-グルカンを資化した腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸により、セカンドミールの摂取時に血糖上昇を抑制する消化管ホルモンの分泌が促されたためという機序が考えられる。

β-グルカンを2.5g含む大麦パンのセカンドミール効果が確認できた。ファーストミールでも血糖上昇の抑制効果が認められたが、セカンドミールでより効果が明確だった。

【研究機関】
はくばく、山梨大学、静岡県立大学、山梨学院大学

※1 薬理と治療 41, 8, 489-95, 2013
※2 Am J Clin Nutr 87,3, 645-54, 2008
※3 薬理と治療 44, 11, 1581-7, 2016

大麦パンのセカンドミール効果に関する研究
2018年7月23日日本食品科学工学会第65回大会, 口頭発表