大麦の健康価値

■大麦BASIC

糖代謝に必要なビタミンやミネラルの補給源

大麦は、体内で糖をエネルギーに変えるときに欠かせないビタミンB1やマグネシウムの補給源にもなる。豊富に含まれる食物繊維が糖の吸収をゆっくりにすることで、肥満や糖尿病の誘因となる食後の高血糖を抑えると同時に、摂取した糖を効率よくエネルギーに変えられるというわけだ。

3割麦ごはんで食物繊維が5倍、ビタミンB1が3倍、マグネシウムが2倍


麦ごはんで脚気を防いだ“麦飯男爵”こと高木兼寛

高木兼寛

写真提供:東京慈恵会医科大学

江戸から明治時代に多数発生し、死に至る病気として恐れられた脚気。海軍の軍医で、東京慈恵会医科大学の創始者である高木兼寛(たかきかねひろ)は、脚気の原因が食事にあると考え、海軍の兵員の食事に麦ごはんを取り入れた。すると、日清戦争では脚気による死亡がゼロ、日露戦争では3人と、ほぼ完璧な予防効果を収めた。一方、麦ごはんを取り入れなかった陸軍では日清戦争で約4000人、日露戦争では約2万7800人が脚気で死亡している(注)。海軍の兵員数は陸軍の約10分の1程度だったことを差し引いても、麦ごはんの効果は絶大だったと言える。

高木兼寛は、脚気の原因がたんぱく質不足(窒素不足)と考えていたが、昭和元年(1926年)に「抗脚気ビタミン」がみつかり、ビタミンB1と命名された。高木兼寛はビタミンの発見までのレールを敷いた存在として、「ビタミンの父」「麦飯男爵」などと呼ばれている。

(注)脚気による死者数は史料により差異がある。

参考:日清・日露戦争と脚気, 和光大学総合文化研究所年報「東西南北」,144-56, 2007
   高木兼寛の医学 : 東京慈恵会医科大学の源流,松田誠著,東京慈恵会医科大学, 2007