β-グルカンが豊富な大麦で免疫機能強化、sIgA分泌やIL-10発現を促す


【背景】
大麦のβ-グルカンは、腸内細菌による発酵を介して短鎖脂肪酸の産生を促す。短鎖脂肪酸は、免疫系を刺激し、抗炎症作用の調整に寄与すると考えられている。したがって、大麦の摂取による腸内の短鎖脂肪酸量の増加は、腸由来の免疫機能を強化すると予測される。

オーツ麦のβ-グルカンの投与がマウスの腸の白血球と腸の上皮細胞を活性化することが示唆されるといった先行研究※1はあるが、多くの研究はβ-グルカンの抽出物を用いて行われており、大麦を食品として摂取した場合の免疫系の変化に焦点を当てた研究は、これまでほとんどなかった。

高脂肪食の摂取は免疫系に悪影響を及ぼす。最近の研究では高脂肪食の投与によるマウスの血清IgAレベルの低下が示されている。※2そこで本研究では、食事誘発性肥満マウスにβ-グルカンを豊富に含む大麦(以下、高β-グルカン大麦)を投与した場合の、分泌型免疫グロブリンA (sIgA)の分泌や各種サイトカインのmRNA発現レベルの変化を検討することを主な目的とした。また腸内細菌叢と短鎖脂肪酸の産生量の関係も調べた。

【方法】
4週齢のC57BL/6J系のオスマウスを11日間馴化。高脂肪食(脂質エネルギー比50%)に高β-グルカン大麦の一品種である「ホワイトファイバー」の粉を添加した餌を与える群(HGB)、セルロースを添加した餌を与える群(C)、各群8匹を90日間飼育した。総食物繊維量はどちらも5%となるように調整した。

体重と飼料摂取量の測定は週2、3回行い、11週目に5日間糞便を採取。飼育期間終了後に解剖し、消化物を含む盲腸、腹腔内脂肪組織(後腹壁、精巣上体周辺、腸間膜脂肪)、肝臓の重量の測定、回腸、肝臓、脂肪組織のDNAマイクロアレイ解析、盲腸および血清中のsIgA、各種サイトカインレベルの測定、盲腸および糞便中の短鎖脂肪酸量の測定、リアルタイムPCR法による盲腸の腸内細菌叢の解析、回腸の免疫に関連するmRNA発現分析を行った。

【結果】
飼料摂取量は2群間で有意差がなく、飼育期間中のエネルギー摂取量は同等とみなされるが、Cに比しHGBは体重の増加が有意にゆるやかで最終体重も有意に軽かった。肝臓、後腹壁、腸間膜脂肪の重量はCに比しHGB で有意に軽かった。盲腸はCに比しHGB で有意に重かった。

盲腸および血清中のsIgA濃度はCに比しHGBで有意に高かったが、血清中のIL-6とIL-10の濃度には有意差がなかった。

短鎖脂肪酸、有機酸濃度でCに比しHGBで有意に高かったのは、盲腸内容物中の総短鎖脂肪酸、プロピオン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、乳酸、コハク酸、糞便中の酪酸、プロピオン酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、コハク酸だった。

盲腸内の総細菌数はCに比しHGBで有意に多く、門レベルではBacteroidetes、Firmicutes、属レベルではBacteroidesBifidobacteriumLactobacillusAtopobium cluster で菌数が有意に多かった。

回腸におけるIL-10の mRNAの発現レベルはCに比しHGBで有意に高かったが、その他のサイトカイン(IFN-γ、IL-12、IL-17、IL-1β、IL-33、IL-4、 IL-5、 IL-6、TGF-β、TNF-α)には有意差がなかった。多量体免疫グロブリン受容体(pIgR)の mRNAの発現レベルはCに比しHGBで有意に高かった。

sIgA濃度と回腸および盲腸の免疫系に関連するパラメーターとの相関は、盲腸のsIgA濃度とイソ酪酸、乳酸、コハク酸、Lactobacillus、pIgRで正の相関が、血清中のsIgA濃度とほとんどの腸内細菌の間で強い正の相関があった。IL-10のmRNA発現レベルは、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、Bifidobacterium,、Lactobacillus、pIgRと正の相関がみられた。

【考察と結論】
大麦の摂取により盲腸および血清中のsIgA濃度が上昇し、sIgAの腸管腔内への分泌に関わるpIgRの発現レベルも上がることを確認した。また盲腸および血清中のsIgA濃度と、腸内細菌数や腸内発酵代謝物の増加には正の相関があった。大麦の摂取による腸内細菌叢の変化が免疫機能を上げ、特に高脂肪食摂取時のIgA分泌レベルを上げることが示唆された。

酢酸やプロピオン酸はGタンパク質共役型受容体43(GPR43)を介し、制御性T細胞(Treg)の遊走を促すという報告がある。※3Tregから分泌されるIL-10は炎症性サイトカインの産生を抑制する。プロピオン酸濃度とIL-10のmRNA発現に正の相関がみられたことから、大麦の摂取はプロピオン酸を介してTregの遊走とIL-10の分泌に影響したと考えられる。また盲腸および血清中のsIgA濃度とLactobacillusや乳酸濃度に正の相関がみられた。LactobacillusはIL-10の発現を増やすという報告※4もあることから、乳酸を産生する細菌の増加が腸の免疫応答を介しsIgA濃度を高めた可能性もある。

【研究機関】
大妻女子大学、はくばく

※1 Nutr Res 30, 1, 40–8, 2010
※2 Biosci Microbiota Food Health 38, 2, 55–64, 2019
※3 Science 341, 6145, 569–73, 2013
※4 J Allergy Clin Immunol 115, 6, 1260–7, 2005


Ingestion of High β-Glucan Barley Flour Enhances the Intestinal Immune System of Diet-Induced Obese Mice by Prebiotic Effects
Nutrients 13, 3, 907, 2021

2021年4月14日掲載